小学5・6年課題図書 「カブトムシ山に帰る 山口進」を読んで

2018年04月23日 17:11

 4年前になるが、この本に出合ったのはツタヤ下館東店で、課題図書のコーナーに陳列されているのが目に留まったからである。小学生5・6年用の本であるが、面白く読ませてもらった。カブトムシは、もともと奥山に生息していた小型の体形だったが、人の近くの里山に住むようになり、幼虫時代に餌を多量に食べられるようになって体形が大型化したと、著者の研究課程とともに、疑問が一つ一つ解決される形で説明されていく。著者は二十年ほど前に、全国のクワガタの写真集の本を作る仕事をしていたのだが、そこから雑木林での幼虫探しをしているうちに、長年の疑問だったカブトムシの小型の謎である、幼虫の生態に行きついたのだった。

 常々疑問に思っていることがあると、それが偶然という形で判明していくことがある。その導きは、ちょっとした気づきやひらめきから始まることが多い。そんな時は、心踊るのも常である。生活していると、不思議に思うことに出くわすが、それを疑問として持ち続けて、夏休みの自由研究に題材として取り上げてみるのも、科学への一歩である。

 実は、この本に感銘を受けたせいか、恐竜の絶滅のことが、ふと頭をよぎったのである。恐竜の絶滅の原因は地球が氷河期に入ったためとか、隕石による地球の環境の悪化とか言われている。その真偽は、地質学者にゆだねるとして、生物学的に考えると、このカブトムシの生態が参考になるのではないだろうか。というのは、里山で栄養状態が良くなったカブトムシは大型化していき、人の暮らしが里山から離れてしまうと、樹液も減り、固体数も減少して、さらには、元から生息していた奥山に帰り、再び小型化した。

 これと、反対のことが恐竜に言えないだろうか。気候が温暖化し、植物が繁茂し、動物が増加してくると、恐竜は大型化していった。しかしながら、何百万年のうちに地球環境が変化し、それに対応できなくなってしまった。カブトムシは、1年生からせいぜい3年生で、幼虫時代の栄養状態で体形が決定され小型化して対応できるが、恐竜はできずに滅んでしまったのかもしれない。つまり、大型化したことが、絶滅の大きな生物学的な要因であり、弱点となったのかもしれないのである。

 最後に、その大きさと神秘性で、私を魅了してやまない、生き物がいる。それは、南半球のインドネシア共和国内の小スンダ列島のコモド国立公園の一部である、390㎢で人口2千人ほどの小さなコモド島のコモドドラゴンであるが、4メートルに達する恐竜の生き残り的な存在である。しかし、中世代では小さな脇役恐竜ほどの大きさだったに違いない。