ダンスダンスダンスを読んで

2014年04月09日 17:15

 村上春樹の本である。現実の世界の僕が、あちらの世界に通じる羊男との接触を試みながら、観念的に自分を分析しつつ、元の恋人のキキを追いかける物語として進んでいく。

 村上ワールドの特徴は、不可解な死亡事故や主人公が自分の性格をいびつなものとしてとらえている劣等感にある。哲学的に思索しながら自己認識していく前半部分が過ぎると、周囲の状況に押し出されるように仕事を初め、しばらくすると謎を解明するために仕事を辞めて北海道に向かう。ドルフィンホテルつまり「いるかホテル」を探して、羊男に遭遇し、生き方の啓示を受けるのだった。

 また、僕は、ドルフィンホテルのフロント係のユミヨシさんに逢い、自分にとって精神的な支えになっていることに気付く。過去の女キキへの心残りの謎解きともいえる捜索や、高級娼婦である大学生メイの殺人事件が発生し、重要参考人として警察に寝泊まりしながら三日間の取り調べを受ける。幼馴染の俳優である五反田がメイとキキへ僕を導き、キキの消息が五反田のマセラティに乗せた13歳の少女ユキからもたらされる偶然性ともいえる「つながり」は、あちらの世界とこちらの世界を橋渡ししている村上ワールドを構築している。

 キキを探すきっかけは「片想い」という題名の映画で、五反田の相手役としてキキをたまたま目撃したことだった。そのシーンが、僕の心をつかんで離さなくなったのである。それが五反田との学生以来の再会をもたらし、彼との付き合いの中で、さらに不可解な事件に巻き込まれていく。謎は暗示的に解かれるだけで、読者に任せるのも村上ワールドの結末である。

 殺されたと思われるキキ、死亡したメイと五反田やディック・ノース、そして、僕が保護者としての友達ユキとその母の写真家アメ、さらに父の作家牧村拓とハワイの行方不明の娼婦ジューンなど、僕を取り巻く環境は灰色に近い人たちで満ちている。最後に僕は救いを求めて、ユミヨシさんのいるドルフィンホテルのある北海道を再び目指して行く。

 負の連鎖ともいえる、キキをめぐるつながりが、僕の人生を紆余曲折させ、そんな中で僕は周囲の人たちを愛し、つながりを大切にしようと奮闘努力しながら踊る。最初は自己確認を哲学的に客観視し、行動規範を必死に守りながら。しかし、後半では周囲の人間臭さに流されつつも、僕は踊る。楽しみながら、苦しみながら、頑固にステップを踏みつつ、ダンスし続ける。ダンス・ダンス・ダンス。僕の信条を曲げない思索的で観念的な生き方が、社会的迎合の人生を送る周囲の人たちとの心情のコントラストによる対照性を強調する。僕は触れ合う人たちと軋轢を感じつつも協調性を生み出して、現実世界と非現実な世界が融合しつつ物語は展開していく。僕は村上独特のファンタジーの世界で踊るのである。