生きる目的
真摯に生きる目的について考察してみる。家庭を持つと、生活に忙しく、自己について見つめる時間は、それ以前よりかなり少なくなり、将来について考えることが現実的になってくる。つまり、収入のことを第一に考えるので、自分がやりたいことやほかに夢があっても、その選択は限られてしまう。確言すれば、就職したり、結婚する前に、できるだけ自分の夢に向かって行動することが重要となってくる。しかし、自分で起業したり、スポーツ選手のようなプロなら、この限りではない。自分の力がすべての世界なら、夢は永遠に追い続けられる。夢は非現実的な目標ではなく、現実的な生きる目的になる。
しかしながら、仕事と夢が一直線につながっている人ばかりではない。生活の糧だけに仕事をしている男女も多いし、あるいは、家庭を守り、子供を育てている専業主婦も多い。その人が、趣味に生きたり、子育てが生きがいであり、生きる目的であるなら、何も言うことはない、本人にとって最高の人生である。しかしながら、そうでない場合は、夢が仕事あるいは子育てとは違うところにあり、現在の生活の手段が収入を得るための仕事であり、あるいは子育てとともに、収入のための仕事をしているということになる。だから、収入さえ入れば、仕事にはあまり頓着しない人生を送っている人も多い。専門家や芸術家、プロと呼ばれる人たちを除くと、一般的な人の生活がそうかもしれない。そんな人たちの生きる目的は、社会的生活の中で人のために尽くすことであり、楽しい家庭生活を送ることである。
では、十代の君たちが目指すことは、どちらの道だろうか。最近、小保方晴子さんという理研の研究員のSTAP細胞が話題になっている。彼女の人生はまさしくスペシャリストとしての夢を持ち、仕事と生きる目的が一直線上につながっている。だから、すべての情熱を仕事に傾けて、研究生活が彼女の人生そのものなのである。あるいは、その対極的な人生設計として、結婚をして、幸せな家庭を築きたいと願っている女性も多いはずである。どんな人生を選択するかは、君の自由であり、人生の目的をどうとらえるかによる。仕事で自己実現を極めるか、家庭で子孫繁栄を望むのかは、その人の将来の設計次第である。
私の意見は、もし、やりたいことがあるなら30歳までに、自分の納得いくまでやることである。そこで、自分の才能と意思を確認して、続けるかやめるか選択するといい。つまり、自己実現を追及するのは30歳で一区切りとし、続行が無理ならば、方向転換して、幸せな家庭を築くほうへと進むのである。もちろん、最初から家庭を築いて、若い夫婦として楽しく暮らす道もある。子作りに励むのは少子化時代の現在では、日本にとってとても大切なことである。高齢者が増え、年金生活者を支える若者の負担は、ますます大きくなりつつある。一人のお年寄りを二人で支える現在は、変えていかねばならぬ現実である。
そんな中で、介護の需要が非常に増加しており、必要不可欠となっている。これは、社会的な大きな問題で、高齢者の命に係わることであるから、この老人介護を人生の目的として、考える必要もある。介護士の増加と介護施設の増設は、ますます重要な問題になっていくだろう。ぜひ、人生の目的が老人介護として生活する人たちが多く出てくることを望むものである。
一方、これとは反対に、自殺も避けては通れない問題である。日本の自殺者は約3万人で、十代からお年寄りまで、それぞれの理由で自分の命を絶つ。その原因は、人間関係や、お金や、罪の意識などさまざまであろうが、生きる目的と密接に関係している。人は、生きる希望があれば、自殺はしない。そこに、まったく希望が見いだされず、生きる気力がなくなり、生きる目的が全くなくなったとき、自殺という道を選ばざるを得ない。つまり、生きることは、生物的な欲求からの食べるという行動は手段でしかなく、精神的な生きる価値ということから支えられているのである。
ということは、私たちの生活が衣食住と言われ、物質的なもので行われているが、その中心にある、生きようとする意志は、精神的な自己の価値判断から生じているのである。シェークスピアのハムレットが、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。」と独り言をいう場面があるが、人は自殺する権利はない。この世に生を受けた以上、生きるのが義務なのである。自分の命を絶つのは人殺しと同じ犯罪である。それは、その人の周りの人間を悲しませるからであり、社会的に悪影響を与えるからである。そして、何よりも、その人がなさなければならない、その人生における目的を果たしていないからである。
生きる目的とは自分で考えて、行動し、実行されていくものであると同時に、君にしかできないことをなさなければならないものであると考える。君はこの世界で一人だけであり、生きること自体が社会に影響を与えているのであり、君が唯一無二の存在なら、君の生きる目的も、君にしかない唯一無二のもののはずだからである。それを、いつ見出し、どのように実行するかは、すべて君にゆだねられている。まずは、学校で学びつつ、生活の中で考えてみよう。孔子の言葉で、結びとする。「学びて思わざれば、すなわち暗く、思いて学ばざれば、すなわち危うし。」